表題に驚かれたかもしれない。
「カーサ」とは知っている方も多いかもしれないけど、マガジンハウス社刊の「CasaBRUTUS(カーサ ブルータス)」のことである。
最近は「一個人」などと並んでコンビニに置かれている建築・デザイン系のお洒落な雑誌である。
僕がわざわざこんなことを言うのは、ある日後輩と話していた時のこと、どの専門誌を読むかという話題になったことがきっかけである。
その後輩の一人は、新建築やGAは読まないけど、カーサなら買っていると言った。
確かに「カーサ」はお洒落で読みやすく、建築やデザイン系の学生に支持されている。専門外でなくとも読みやすい言葉選び、編集のセンスの良さ、ボーダーレスな情報が載っているため、建築に少しでも興味関心がある若い世代に受け入れられやすいのだろう。かくゆう僕も10冊くらいは手元にある。
GAの二川由夫さんは「特集:2010/2011総括と展望」対談で若手建築家がGAに載ることにステイタスを感じているか、という問いに「むしろ『CasaBRUTUS』に載った方が、喜ぶかもしれませんよ」と語っている。二川さんのジョークだが見過ごせない点である。
だが建築を学び、将来設計職で食っていこうと考えている学生には、残念ながらなるべく早いうちにカーサを卒業して欲しいと思う。
この雑誌はいわゆる「専門誌」でない。
平面図、立面図があってもスケールが載っていないとか、線がかなり簡略化されて描かれていたりするので、一見図面のようだがこれを建築図面として見てはいけない。
では誰が読むべきか。
答えは至極単純で、建築を知らない、または専門家ではない一般人である。この雑誌は建築を知らない一般人、これから家を作ろうと考えていたりするビギナー向けに平易な言葉で書かれた導入書なのだ。
「カーサ」という言葉はスペイン語の「家」である事からもわかるとおり、「家づくりに興味を持ったけど、一生に一度の買い物だしこだわりたいよね!」という主張を持った中産階層向けに編集されているのだ。
ただし専門家ならば、もし資格を取り自分のアトリエを立ち上げて住宅作家になったならばむしろ読むといいかもしれない。
顧客のニーズを知るという意味で、一歩引いた見方でこの雑誌と対峙できるからだ。
だから建築学生が「これが建築かー」と納得してはいけない。この雑誌は都市的視点はもとより専門書に必要な要素がごっそり抜け落ちているため、そもそも建築の議論にならない。そのためカーサを読む時間があったら、SDの黒本や磯崎新を1冊でも多く読むことを僕はお勧めする。また住宅を知りたいのであれば『新建築住宅特集』『住宅建築』などしっかりとした図面が載っている雑誌もある。
ここで扱われている建物が建築ではなく「商品」という視点に立って初めて、この雑誌の立ち位置が理解されるだろう。