大阪・神戸の建築を見て回ったこと

先日、内定先の内定者懇親会のために大阪へ行きました。
が、のっけから遅刻をしてしまい、懇親会には1時間程度しか出席することができませんでした。何やってんだか…。
幸い同期には恵まれ、その後も意気投合した一部の連中で夜の大阪に繰り出し、その夜は会社で用意してくれた市内のホテルに泊まることになりました。

次の日にすぐに帰っても良かったのですが、せっかく大阪まで来たので、午前中に市内、午後はちょっと足を延ばして兵庫県立美術館に行くことにしました。

午前中は北海道からはるばるやってきた同期の川崎君となんばの建築めぐり。
まずは内定先の大阪本社。

どーん。

東京よりはるかに綺麗でした。彫刻あるし。
こんなオフィスで仕事したいものだけど…。

オーガニックビル(1993)
設計:ガエタノ・ペッシェ

トゲトゲした突起のひとつひとつがプランターになっています。審美性うんぬんより、そこに「在る」ことに強烈なメッセージ性を持つ建築。その意味ではアサヒ本社の「炎のオブジェ(=金のウ○コ)」に近いかもしれない。仮にこのファサードが御堂筋に向いていたら・・・と考えてしまうのでした。

ヴィヴィアン・ウエストウッド心斎橋店(2011)
設計:?

これは完全にミス。本当は安藤忠雄の「OXY」を撮りに行ったつもりだったのですが、今や別の建物になってしまい、その隣にあったので間違えて撮ってしまいました。無機質なRCがどこか安藤さんっぽかったので。しかし今見返してみると、ディテール、目地、仕上げ、上部の装飾など、どこをとっても全く別物でした。ただ、安藤建築を意識していることは明白なので、ここ大阪での影響力の強さを実感します。

▽参考作品:住吉の長屋(1976) 設計:安藤忠雄

BIGI 3rd(1986)
設計:安藤忠雄

もともとは透明なガラスと鉄骨、PCブロックの簡素な構成だったようですが、正面のガラスに赤いフィルムが張られてしまったみたいです。さすがに丸見えは店の運営上都合が悪かったのでしょうか。間口2間という狭小敷地でも骨格は強く、存在感を発揮していました。

付近にあったはずの黒川紀章の「ソニータワー大阪」は跡形もなく消え去っていました。時代とともに都市は変化する、その命題には人一倍自覚的であった黒川さんも、天国でどのように思っているのでしょうか…。

GALLERIA[akka](1988)
設計:安藤忠雄


これも心斎橋の路地にある狭小建築です。ただしこれはテナントショップのコンプレックスで、雰囲気としては「TIME'S」や「コレッツォーネ」に近いかもしれません。地上5層地下2層の吹き抜けを持つ大空間をもち、まるでエッシャーのトロンプルイユに迷い込んだかのように、複雑な階段をもつ迷宮です。これだけの狭い敷地にこれだけの大空間を違和感なく挿入してしまう手腕と、この物件の出資者にただただ脱帽してしまいます。ただ、やはり店舗としては使いづらそうでした。
階段を上るのは同期の川崎君です。

D-Hotel OSAKA(1989)
設計:竹山聖/アモルフ


「都市生活者のために必要な機能を搭載したこの建物は、無秩序な増殖を繰り返す都市に対峙しながら、さながら「抵抗の砦」のように毅然と起立しているのである」『建築MAP大阪/神戸』1999,TOTO出版
京大の竹山先生によるラブホテルです。このホテルで日夜行われる行為自体が「無秩序な増殖」に対するアンチテーゼなのか!?と思ったり思わなかったり。階段の見上げはアツいですが、ファサードのとってつけたような石張りの玄関が涙を誘います。

湊町リバープレイス(2002)
設計:大阪市住宅局営繕部、安井建築設計事務所

高速沿いのひときわ目を引くこの建物、複合イベントスペースらしいです。こういう建築ができてしまうあたり、東京とは違う建築や都市空間の組み立て方があるのだなーと思いました。最上部は展望台になっていて欲しかった。(願望)

大阪新歌舞伎座(1958)
設計:村野藤吾

擬桃山様式のてりむくり屋根を藤吾流にアレンジした建築。部分意匠の反復によるファサードが、見る者に強烈な印象を与えます。都市空間を形成するアイコニックな建築が歴史の再読から成立するというのは西洋では一般的なことですが、日本ではキッチュになってしまうためにあまりなされません。でも、このような伝統のアレンジを持つ建築、数寄屋造りのような建築も、もっとあっても良いのではないかと思ってしまいます。


昼になり、飛行機の時間のある川崎君とはここで別れて灘に向かいました。

灘駅(2009)
設計:?

最近になって建て替えられたみたいです。ちなみに過去のものはこちら
見事アールデコ風の旧駅舎から分離派的建築になった灘駅、様式が変わってしまっても、アーチは保存され、記憶は継承されます。無駄の少なく、なかなか小洒落た建物でした。

兵庫県立美術館(2002)
設計:安藤忠雄


兵庫で最もヒロイックな建築ではないかと思われる県立美術館です。10m程度長く突き出した庇をもつ細長い3つのヴォリュームが特徴的で、規模もでかい。

案内してくれたのは、武庫川女子大の、のっこさんです。


榎忠という現代アーティストによる企画展をやっていました。銃やH鋼、旋盤など、金属を用いたオブジェを空間に並べ、儀式空間のような荘厳な空間を演出していました。機械や廃墟好きな自分にとって、とても興味深い展示でした。


夕景

日が落ち、内部からのライトアップもあってとても美しい箱が浮かびあがりました。忘れない光景になりそうです。


これにて大阪・神戸の建築めぐりは終了しました。
この日めぐった限りでは、安藤さんの建築が質・量ともに強いと感じました。まだこのあたりには行ってみたい建築がたくさんあるので、また機会をみて訪れたいと思います。
一緒に回ってくれた川崎君、のっこさん、本当にありがとうございました。