本棚を作ったこと

昨年末に今のアパートに引越してからというもの、日頃の忙しさにかまけてろくに整理をしておらず、見苦しい状態が続いた私のアパートでしたが、式も終わり仕事も落ち着いてきたので、ぼちぼち住みやすくするかなぁと重い腰を上げた今日このごろ。自宅アパート改造計画第一弾ではトイレ・洗面室のタイルカーペット貼りをしましたが、今回は第二弾として、書棚を制作しました。
学生時代から持ち込んでいるのに加え、社会人になってからも微増し続ける本たちの置場はこのような状態でした。
 うわぁ

まさに知の墓場です。この状態を改善するために新たな本棚が必要になりましたが、既製品はコストやサイズが今一つで、それなら自分で設計してしまえーというのが今回の制作の発端です。
それにしても家具の制作なんて学生時代に課題で椅子を一つ作っただけ、ほとんど素人同然の状態でしたが、家具の制作記などのサイトを参考にイメージをつくっていきました。
今回の制作の要件は以下の通り。

・収納容量を可能な限り大きくし、かつ圧迫感を軽減させること
・部屋のテイスト(ナチュラル)に合わせること
・構造が合理的で、かつ単独施工が可能なこと
・出窓の開閉を考慮すること
・A4版の雑誌が入るスペースをつくること
・低コスト

これらの要件から導き出した解答は、

・幅は柱壁間を隙間なく埋め、高さは出窓の窓台と同面にすること
・A4サイズの雑誌類を下部に、単行本を上部に収納するよう高さ間隔に変化をつけること
・隔て板をセットバックし、本と同面にすることで水平性を強調すること
・塗装によって視覚的存在感を消去すること
・12mm厚と9mm厚のコンパネで制作し、二つに分離可能にすること

でした。一般的な書棚は棚板と垂直の縦材が同面に出てくるため、安定感のある形なのですが、狭い室内では縦材が目立ってしまいます。その垂直性を消去するために、隔て板をセットバックし、隔て板を本に埋めさせてみたらどうかと考えました。もちろん水平負担の減少を考えなくてはなりませんが、それは背板に全ての材を留めつけることで解消させることができます。かつ背板と隔てを壁と同色に、棚板を床と同色に塗装することによって、限りなく存在感を消去し、棚板だけが壁から生えているような状態を目指します。

方針が決まったので設計を行い、木取図を基にホームセンターで加工してもらいました。材料はコンクリート型枠に使う「コンパネ」というベニヤ板を使用しています。コンパネを内装材や家具に用いることは普通しないのですが、合板なので反りも少なく強靭で、何より安価であるため採用しました。工作費も格安だったので数ミリの誤差は許容範囲に。


まずは材料のやすりがけをします。ニスや塗料を塗る場所は木口もやすっていきます。この工程を飛ばすと、塗装面が粉っぽくなってしまうので、きれいに仕上げることができなくなってしまいます。地道ですが大切な工程です。


次に白の塗装をしていきます。組み上げてから塗装すると、塗り分けが大変になってしまうので先に塗ります。途中で剥げてしまってもタッチアップをすれば問題ありません。背板もベランダで乾燥させます。


材料が揃ったらいよいよ組み上げです。この制作のために、マキタの電動ドリルを購入しました。
マキタのドリルといえば、ポール・ギルバート。

参考写真

最高にロックなドリルで、がしがし組んでいきます。
ギュィィィン


隔て板と棚板の接合部はねじが使えないので、木ダボを使いました。あらかじめ隔て板の木口と棚板に穴をあけておき、ボンド付けしながら嵌めていきます。


そうして最後に天板を載せニス塗装すればれば完成です。
それを二つ、線対称になるように作りました。




完成!

肉眼ではあまりわかりませんが、下段と上・中段は高さに変化をつけ、下段には雑誌類やA4ファイルがすっきり収まるようになっています。

背板と壁の間には隙間があり、電気器具などのコードを隠すスペースとなっています。


二つの書棚の接合部は隔て板の厚みを薄く(12mm→9mm)して、板が2枚重なった時の視覚的な重さを軽減させています。


窓台との取り合い。数ミリ棚の方が高いですが、ほぼ同面になりました。


このように二分割することで、一人でも設置ができます。



本を並べてみると、意図通り本と隔て板が区別つきにくくなり、棚板の水平性が強調されているのがわかると思います。なおかつ、床や窓台と同じ色の天板・棚板が張り出しているので、立った視点から見ると、本の背表紙の存在感が希薄になっています。「存在感を消す」効果が想像以上に表れていて、我ながら驚きました。


実際につくって感じたのは、建築と同じように納め方が全てということでした。設計段階の納まりを考えるのもトレーニングになりますが、実際に施工してみると、材の狂いをどう納めようかという問題に直面します。特に今回のような柱壁間にぴったり収まるような設計の場合、数ミリ広がっただけで入らなくなってしまいます。それを予測し、先手を打つというプロセスは、建築の設計や施工現場での経験が活かされています。本棚という小さな作品ですが、100%自分自身の内省から生まれたデザインということを誇れる作品になりました。
当分本の収納には困りそうにありません。


おわり