大分建築めぐり (1日目)

先日大分の建築めぐりに行ってきました。
もとはというと僕が「建築家の墓」というテーマで卒論を仕上げていたところ、Twitter経由で美大生のまきのさんと出会いました。出身が近所だったこと、茶室制作の経験があること、そして何より「死」という重いテーマを扱う同士ということで意気投合し、槇文彦氏設計の「風の葬斎場」を見ようということからこの旅行計画はスタートしたのでした。


参加したのは左からまきのさん、なっつさん、あいさんと僕の4名です。ちなみにまきのさん以外の2名は初対面。


2日間の旅行計画で、飛行機で旅立ちました。

まず第一目的である風の葬斎場へ、レンタカーをとばして向かいます。

風の葬斎場
設計:槇文彦(1997)

レンガタイルで覆われたマッス。右は斎場。


エントランス。長いRCの庇が出迎えてくれます。


エントランスから火葬場に向かうアプローチ。コンクリートの壁と屋根の鉄骨は細いバーで支えられており、浮遊感が生まれています。


祭壇。ディテールを削いだ緊張感のあるモノリス


スリットからは床にやわらかな光が落ちるよう、仕上げを工夫してありました。


棺を運ぶ機械。


集骨室。自然光だけで採光してあります。削ぎ落とされた空間。


集骨室の扉ディテール。上部でレールになって、地面からは縁が切れています。そのため開閉がとても静かで、雰囲気に沿った工夫が見てとれました。


待合スペースもオブジェが置かれ、天井に四角く空けられた穴から自然光が降ってきます。つい光の先を見上げてしまう厳かな空間です。


RCと鉄骨とガラスのディテール。サッシなんかありません。非常にクール。


ラウンジを上から見たところ。


トイレの案内が、当初のピクトグラム+案内だけでは不十分だったのでしょうか。ボードが無残にベタベタ貼られていました。こればかりは設計に非があったと言わざるを得ません。


写真の確認をするまきのさん。広い縁側のような場所から「風の丘」を眺めることができます。


擦りガラスと床の接合部。この建築はついつい魅入ってしまうほどディテールが綺麗に納められています。


斎場の天井には水盤の反射光がスリットを通して浮かび上がっています。


斎場のスリットと水盤。


最後に風の丘を散策しました。


全景。

もともとこの風の丘には古墳が多数残されており、古よりサンクチュアリといえる場所だったのだと思います。このような環境に呼応した形で火葬場併設の葬儀場という負のプログラムを良質なモダニズム建築へと昇華させた槇氏の技量には、ただただ感服しました。卓抜したアイデアだけではなく、葬斎場という厳かな空間を体現させるために用いたディテール、光の取り入れ方なども大変参考になりました。


移動中に見つけた奇岩群。


奇岩で盛り上がる建築女子たち。


うし。


うま。

穏やかな景色に気を取られているうちに次なる目的地、末田美術館に到着しました。

末田美術館
設計:原広司+アトリエ・ファイ(1981)

彫刻家夫妻の私設美術館です。施設の内外に無数の彫刻群が雑然と置かれていました。


木の壁に瓦屋根と、一見木造のようですが、内部は完全なRC造。軍艦のような黒塗りの外観とそれに対して純白な内部は、空間の表裏を露わにします。


庭からの眺め。黒塗りの中にもアトリエ・ファイの造形言語が見え隠れします。

残念ながら内部撮影は禁止だったため撮れなかったのですが、内部は2層吹き抜けで小さな階段があり、2階のバルコニーから内部を見渡せる仕掛けなどまさしく原さんの建築でした。
内部のプランはここから見ることができます。→末田美術館公式HP-施設紹介

次に末田美術館のほど近くにある、由布院美術館に足を運びました。

由布院美術館
設計:象設計集団(1991)

看板がかわいい。


中庭から。


昭和にタイムスリップしたかのような内観。


大きな中庭と、それを囲むようにぐるりと一周できる様々なヴォリュームの構成です。

この美術館この地で短い生涯を閉じた画家、佐藤溪氏の作品を収蔵するためにつくられました。あたかもひとつの時代がそのまま凝結したような空間を目指したのでしょうか。木造で建てられ、カラフル(それも少し褪せたような渋い色)に塗られた建築は、既存の建築様式にはない温かみが感じられました。寸法の小ささもあってか、昭和の木造小学校ってこんな感じだったのだろうなとふと思いました。

敷地内にはなんと足湯もありました。

足湯に浸かって。癒されます…。

由布院美術館を後にして、一同は宿泊地の別府市に向かいました。

B-Con PLAZA
設計:磯崎新(1995)

磯崎氏設計のコンベンションホール。夕闇に堂々とした佇まいを見せています。


アプローチの階段。照明がワクワク感を演出しています。


内部。コンベンション・ホールとフィルハーモニア・ホールの隙間にエントランスがあります。大胆で明快な構成が気持ち良い空間でした。潔いというか。

この日の見学は以上で終了。ホテルへ向かいました。
ホテルのフロントで、この日の締めとなる飲食店を探します。


飲食店リサーチ。真剣です。

夜の繁華街へと繰り出す一行。


途中で猫を見つけ、なでくりまわすまきのさん。猫の方もまんざらでもないご様子。


結局偶然見つけた居酒屋でこの日は締めくくりました。


2日目に続く。